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ライフデザイン・カバヤ福山支店

竣工年 2018.03

細見 亮太

計画当初1枚のパースがお客様より送られて来て,「CLTを用いて何とか実現したい!」とご相談を受けました。
そこで納まりや構造的なメリットも考え,CLT パネル+鉄骨部材を用いた 部材ハイブリッド構造を計画しました。設計手法や納まり等,他にあまり例のない中での設計でしたので,既往研究や実験等を参考にしながらも木,鋼それぞれの加工業者様,施工業者様とも密に連携して設計を進めていきました。

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CLT パネル+鉄骨部材を用いた 部材ハイブリッドオフィスビルの構造デザインと施工

「CLTの更なる可能性を示したい」とのコンセプトのもと取組んだCLT壁柱+鉄骨梁を用いた部材ハイブリットオフィスビルの設計について,その構造設計手法やディテール,施工について報告します。

計画当初建物パース

○建物概要

意匠プランは長辺方向33m×短辺方向14mをベースとして,内部に斜めの壁や北西側には長さ約10m,高さ6mのキャンチレバー部分を包含したフレキシブルな形状が計画されました。

設計にあたり,CLTパネル工法の普及・促進を念頭にフレキシブルな形状への対応,今後のCLTパネルの可能性検討のため,CLT壁柱と鉄骨梁との部材ハイブリッド工法を採用しました。

仕上げに関してもCLTの木質感を損なわないように,60分準耐火・内装制限等に適用させるため燃えしろ設計を用い,可能な限りCLTを現しにし,木のぬくもりを感じられる空間を計画しました。

2階伏図

○構造計画と検討

計画を実現するにあたり,CLT壁柱+鉄骨梁を用いた部材ハイブリッド工法を採用しました。

本構造形式ではCLT壁柱が鉛直力,水平力双方を負担するため,平成28年国土交通省告示第611号にならいCLTパネル工法として設計する必要があります。
本構造形式を採用した経緯として,計画当初CLTパネルのみでの架構形式を検討していましたが,本計画ではCLT壁線を各方向で揃えられないため垂れ壁,腰壁の設置が難しい状況でした。また,各階高さが3m以上のため,CLTパネルの製作サイズの都合上小幅パネル架構となり,十分な耐力を得ることができませんでした。

そこで,従来CLTパネル垂れ壁や床に期待していた曲げ戻し効果を高剛性,高耐力な鉄骨梁に期待することを考えました。それによりCLTパネルの垂壁等に比べ,梁せいを抑えながらも高耐力が得られ,かつ鉄骨梁勝架構を採用することで斜め方向の壁配置やフレキシブルな壁線配置など,自由な空間を創出できると考えました。また,H型鋼とCLTパネルとの接合部も引きボルト形式や鋼板挿入ドリフトピン仕様など,既往のディテールを用い計算により耐力を算出することができ,相性がよいと考え採用にいたりました。

構造検討にあたり構造計算はルート3を採用し,保有水平耐力を算出することにより,大地震時の構造安全性を確認しました。終局時の降伏型としては,CLTパネルは弾性域に留め上下端部の引きボルト(SNR490B)の引張降伏が先行する靭性のある降伏型としました。
部材ハイブリッドではありますが,CLTパネル脚部の引きボルトを伸ばすことにより靭性を確保しているため,2015年版建築物の構造関係技術基準解説書の部材ごとに構造が異なる場合を参照し,平成28年国土交通省告示第611号第八に照らし合わせ,CLTパネルのDS値を用いました。

本構造種別の場合平成28年国土交通省告示第611号第八第二号の仕様規定は適用できないため,DS値は0.75以上もしくは特別な調査または研究に該当する措置として,荷重増分解析による各層の層せん断力-層間変位関係,塑性率を用いた計算DS値となります。本設計では,X方向は耐力壁が多くかつ壁線も揃っているため,0.75を,Y方向は壁量が少なく壁線も揃っていないため,靭性による効果を考慮した計算DS値を用い、必要保有水平耐力を満足していることを確認しました。

○接合部のディテール

鉄骨骨梁とCLT壁柱との接合部は,引張力に対しては壁パネルの上下四隅に引きボルトを用い,鉄骨梁フランジと接合させる方式としました。せん断力に対しては壁パネルの上下梁に取り付けたプレートにドリフトピンを打ち込むドリフトピン仕様としました。

本仕様により,従来のU型,L型金物よりも単位長さ当たりにおいて高耐力が発揮されることを理論式により確認し,せん断金物の個数を削減することができました。一方で壁の位置決め,ピンの打ち込みが難しいため,中央のドリフトピン部にはルーズ孔を設け,先行ピンにより位置決めを行えるようにし,施工性に配慮しました。

○施工時の様子

工期は基礎工事から,CLT・鉄骨梁建て方,内装工事まで含めて約5ヶ月でした。
CLTパネル及び鉄骨梁の建て方については約5週間で完了し,CLTパネル及び鉄骨梁との接合についてもスムーズに行えました。
以下に各工程における本設計,工事でのポイントを記述します。

Ⅰ.各部材製作
鉄骨梁部材にはあらかじめ工場でせん断用PL及び床パネル接合用のスタッドボルトを溶接した状態で搬入を行う計画としました。
また今回はCLTパネルと鉄骨部材と異種材料の取合いとなるため,製作段階から,CLTパネル,鉄骨部材双方の専門業者が連携を取り,鉄骨部材の溶接によるひずみや金物の実状配置を考慮したCLTパネル側の加工等,施工性に配慮しながら進めました。

Ⅱ.基礎梁打設
基礎梁施工時には,壁パネル隅部引張アンカーボルト及びせん断金物アンカーボルトもあわせて打設を行います。せん断金物は親子フィラーにより打設後も位置調整が可能ですが,引張アンカーボルトについては位置調整ができないため,アンカーフレームを用いて位置ずれが小さくなるよう配慮しました。

Ⅲ.CLTパネル,鉄骨梁の建て方
基礎梁打設後,1階のCLTパネルの建て方を進め,CLTパネルのせん断金物挿入用スリットに金物をはめ込み,先行ピンにより位置決めをし,端部引きボルトを通して壁位置の調整を行いました。
その後,せん断用PLが溶接された鉄骨梁を同じく,1階CLTパネル上部のスリットにせん断金物が納まり,ピンが打ち込みできるように,鉄骨梁,CLTパネルの位置調整をおこないました。加工を工夫いただいていたこともあり,スムーズに進めることができました。その後,同様にせん断用プレートが溶接された鉄骨梁とCLTパネルの接合を行いました。
キャンチレバー部分も足場を組み,鋼管ブレース及び鉄骨梁の建て方を行いました。施工時は支保工で固定し,最終的に支保工を外し先端のひずみを確認しています。

Ⅳ.CLT床パネルの建て方
 CLT床パネルは「4.接合部のディテール」に示したように,CLT床パネルの先孔に,鉄骨梁部材(壁がある部分は受けPLに溶接)に予め溶接したスタッドをはめ込みエポキシ樹脂を充填硬化させて一体化を行いました。
別途施工時に試験体を作成し,硬化後強度発現の確認を行いました。CLT床パネルの先孔はスタッド径+10mmであったが,工場で施工精度を確保したためスムーズに施工を行えました。


V.2階CLTパネル,鉄骨梁の建て方,内外装工事
1階同様に2,3階のCLT壁パネル,鉄骨梁の建て方を行い,約5週間で建て方が完了しました。その後,小屋組,内外装工事を行い竣工にいたりました。

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MEMBER

全体統括
篠原 昌寿

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