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光・木・風と遊ぶプロジェクト

竣工年 2021.03

貴志 拓哉

本プロジェクトでは実大実験および解析による比較検証を実施し、耐力壁の役割を果たすCLT市松ブロック壁の活用を実現しました。小幅なCLTパネルを組み合わせた壁は対応可能なCLT製造工場や建築現場の増加も見込め、CLTの普及促進、さらには中大規模建物のハイブリッド構造への適応に資するものと考えています。

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建築概要

 本建物は、国土交通省の令和元年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)第 2 回に採択されたプロジェクトで、高知県に建つ地上2階建て、延床面積約2,982㎡の幼保連携型認定こども園です。木の温かみを感じられる幼保連携型認定こども園を設立したいという建築主の要望とCLTパネルの新しい使い方を模索する建築家の思いに対して、園舎で行われていた “積木の時間” に着想を得て耐力壁の役割を果たすCLT市松ブロック壁の提案を行い、南面のメインファサードに採用しました。


建物名称 :光・風・木と遊ぶプロジェクト
建築主  :学校法人 平成学園
建物用途 :幼保連携型認定こども園
所在地  :高知県南国市岡豊町中島1219-1他
建物規模 :2982.31㎡、地上2階、最高高さ8.8m
建築設計 :株式会社隈研吾建築都市設計事務所
構造設計 :株式会社構造計画研究所
設備設計 :株式会社シグマ設備設計室
施工   :株式会社岸之上工務店

構造計画概要

 本建物は、長辺約85m、短辺約32mの長方形の平面構成をとっています。構造種は木造(CLTパネル工法)の準耐火建築物(45分準耐火構造)です。燃え代設計とすることで壁・床の内外現しを実現しています。上部構造はX、Y両方向共にCLT壁式構造で、割付はパネル製造・施工性に配慮しパネル幅3m以内となるように構成しました。使用するCLT壁は高知県産スギ材のS60-5-5、S60-5-7とし、南面のメインファサードには「CLT市松ブロック壁」を採用しました。この「CLT市松ブロック壁」は構造計画研究所が特許を取得しており、本プロジェクトで初めて適用されました。なお2層に連続する壁は通し壁とすることで、接合金物の削減と大版パネル化による施工性の向上を図っています。

CLT市松ブロック壁

建物内観

CLT市松ブロック壁の概要

 CLT市松ブロック壁は、CLTの小幅パネルを組み合わせることにより、CLT構造の課題であった採光性・通風性の確保とファサードデザインを兼ねた耐力壁です。その実現にあたり、力学的特性をドリフトピン1本あたりの性能から構面までを解析により求めています。接合部はパネル表面に金物が現れない鋼板挿入ドリフトピン方式を採用しています。CLTブロックの隅角部をドリフトピンと鋼板により接合し、ドリフトピンの曲げ変形とCLTパネルへのめり込みにより、粘り強い変形性能に期待しています。また、直交層の効果により、異方性が少なく割裂が生じにくい特徴があります。さらにCLTブロックを市松状に配置することにより、CLTブロック間の引張力と圧縮力の相殺による曲げ戻しを期待し、面内せん断力の向上に寄与しています。これらの力学的特性を有するCLT市松ブロック壁は鋼材との組み合わせによって実現できる高耐力壁であり、大版CLTから切り抜いて製作するのみでは成立困難です。

CLT市松ブロック壁も鋼製と接合部概要

耐力発現機構

実験結果と解析結果の比較検証

 代表要素試験体の荷重変形関係の実験結果の包絡線と解析結果の初期剛性、および降伏荷重はともに酷似しており、概ね良い対応を示していることが確認できます。接合部金物及びCLTパネルは曲げ変形成分とせん断変形成分を持つ板要素としてモデル化し、CLTパネルとドリフトピン接合部は引張及びせん断性能を模したバネ要素としてモデル化しました。
 荷重変形関係の包絡線と解析結果についても解析値と実験値が概ね一致しており、実験値と概ね良い整合性を示しています。また、CLT市松ブロック壁は通常のCLTパネル工法を想定した架構に比べ、構面として大きな耐力を有しおり、構面全体が一つのブレースのようにせん断抵抗する耐力発現機構となっていることを確認しました。
 また、本プロジェクトではFEMを活用した木接合部の設計方法の可能性を検証し、既往の指針では評価できない木接合部の設計への適用について検討を行いました。実験と解析の比較検証の酷似を踏まえると、木材の特性を含めたFEMや最新の画像処理技術により仮想実験の実現性に繋がる知見を得ることができました。これらが実現すれば実験の削減、接合部設計の高度化及び定量的評価に繋がり、様々な設計に応用が可能となります。

代表構面試験体」の実験状況

3Dモデルデータの活用

本建物の設計では、社内で開発した CLTパネル工法用の一貫構造計算システムを採用しており、計算の妥当性および運用性の検証を行いながら、実施設計を進めました。複雑なモデル化を必要とするCLTパネル工法ルート3 の構造計算において、本システムの採用により構造モデル化作業の効率化を図りました。また構造BIMモデルを活用した立体形状の把握、接合金物の納まり確認および申請図面提出など、各工程で関係者とのコミュニケーションを取り、有用な知見を得ることができました。

構造BIMモデル

竣工写真

MEMBER

木造キャプテン
篠原 昌寿

木質アドバイザー
野田 卓見

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