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御殿場高嶺プロジェクト

竣工年 2021.12

野田 卓見

本建物は周辺環境と調和した木造曲面屋根を一般的な架構システムで対応できるよう、基本計画段階から関係者間のすり合わせを入念に行いながら実現しました。施主をはじめ、設計・施工に携わった関係者の皆様に深く感謝いたします。

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建物概要

 静岡県御殿場市に建つ、宿泊施設のレセプション棟の計画で、敷地は広大な森の中の丘陵地で、自然環境やコテージと調和する、受付とラウンジの機能を有した建物です。
 周囲に点在するコテージと呼応する家型のプリミティブな断面と、富士山を縁取る大きな窓を緩やかに連続する曲面でつないだ屋根が本建物の特徴的な外観を形成しています。

木造 地上1階
高さ   :5.011m
建築面積 :130.91㎡
延床面積 :122.56㎡
用途   :宿泊施設
所在地  :御殿場市上小林字新萩1504 番1 の内
竣工   :2021 年6 月
設計者  :山下貴成建築設計事務所
構造設計者:株式会社構造計画研究所
施工会社 :株式会社トンボ総合建設
電気設備 :株式会社トシテックエンジニアリング
機械設備 :株式会社仁和工業

建物配置

構造設計 ~架構計画~

 本建物の特徴である屋根面は片流れ屋根と切妻屋根およびそれらを滑らかにつなぐカーブ屋根で構成されています。架構形式は在来軸組構法の耐力壁構造であり、平面的な剛性のバランスを確保するように耐力壁の配置計画に配慮しています。
 屋根梁は下側3 面現しとして同一方向に等ピッチで掛け渡し、室内空間を統一的なデザインとする方針です。コストの観点から極力部材長が6m 以下となるよう基本計画段階で壁位置の調整を行い、6m を超える部分に関しては梁継手を設けて部材を分割し、適宜柱で支持する計画としました。継手も現しとなるため、金物露出がないよう腰掛鎌継ぎとして見え方に配慮しました。

建物断面図

継手部

構造設計 ~木造曲面屋根の構成~

 屋根曲面の構成は基本計画段階から施工者と綿密に協議しながら計画しました。曲面は構造用合板を現場で曲げて施工する計画とし、過去の実績を基に職人さんが曲げ施工可能な厚みとして、t12mm 以下の断面で構成する計画としました。また、最終的な仕上がり面が滑らかな曲面となるよう合板は2 重貼りとしました。各層の継ぎ目位置をずらして割り付けし、接着剤により一体化しました。
 屋根面に用いる構造用合板は接着一体化するため、構造用ビスにより屋根梁に留め付ける計画としました。ビス留めされた合板屋根の水平構面としての性能は、ビス1本当たりの実験性能を基に、詳細計算法により床倍率を算出し計算モデルに反映しました。

構造計算モデル

構造設計 ~合板のはね出し~

 東側屋根面の一部では、意匠的にはね出しを薄く見せる方針のため、受け材を入れず構造用合板のみではね出しを計画する必要がありました。はね出し距離は最大で1m 程度となり、たわみの抑制が設計上の課題でした。
 本建物での荷重条件から合板の厚みを上げるだけでは、現実的でないと考え、鋼材で補強する方針としました。仕上げの構成を考慮すると合板天端面をフラットにする必要があったため、複数枚の構造用合板をT 型の鋼材と皿ビスで一体化し、鋼材が合板の厚みの中に隠れるような断面構成とし見え方に配慮しました。
 構造計算上は合板と鋼材の曲げ剛性を足し合わせてたわみ量を評価し、鋼材の必要ピッチを決定しました。

合板補強部

最後に

竣工写真を掲載いたします。

北東側

西側

MEMBER

木造キャプテン
篠原 昌寿

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