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コンピュテーショナルデザインを活用した造作家具の構造設計

竣工年 2019.03

岡山 信男

最初に「家具の構造検討をお願いします。」と依頼を受けたときは「家具だから簡単にできるだろう」と考えていました。実際にデザイナーからこのイメージを見せられた時は衝撃でしたが、同時にエンジニアとして面白い挑戦をしたいという意欲が沸々と湧き上がってきたのを覚えています。今回はデザイン、構造設計、製作と、一貫して3Dベースで検討を進めました。この家具はどこを切っても断面形状が異なる複雑な形状ですので、脚部のディテールも2つとして同じものはありませんが、3Dデータを最大限活用し、設計から製作までシームレスに連携させることで、この美しい造形を実現できたと思います。

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不特定多数の人が集う2週間限定イベントのために計画された家具の構造設計事例をご紹介します。
この家具は、椅子、テーブル、展示台、受付カウンターといった複数の機能を有しており、それぞれの機能をシームレスに連続させた長大な構造体です。

木の主構造体とスチールの脚1本を基本とした幅約1,200mmのユニットを現場で金物接合する方式としています。各ユニット単体では構造的に不安定ですが、それらを接合し、全体の曲線から成る形態を利用することで外力に抵抗します。

当初デザイン案から最終デザインに至るまでの過程において、積載荷重や地震力などの外部環境とのインタラクションから最適な構造形態を創生するコンピュテーショナルデザインを適用しました。
木の主構造体に対しては、短辺方向に地震力が作用した場合においても家具全体が転倒しないプロポーションとなるよう、平面形状と重心位置を最適化しました。

スチールの脚については、「Grasshopperを用いて主構造体の変位が最小となるよう脚を自由配置する」検討と、「 Abaqusを用いて指定された脚位置で発生する応力に対して最小断面サイズを与える」場合の2ケースについて検討を行いました。

脚の自由配置については、主構造体のメッシュ上の任意点に脚を配置できることとし、このとき脚の本数を制約条件として与え、主構造体の総変位量を目的関数として最適化計算を実施しました。
最終デザインの決定に際しては、現場搬入・組立ての都合上、各ユニットに1本ずつ脚を配置する必要があったため、おおよそ1,200mmピッチの千鳥配置としました。
コンピュテーショナルデザインは創造的な業務を補助する役割として極めて優れたアプローチですが、最適化形状から最終デザインに至るまでには、人間の持つ審美性や製作工程の合理性、使い手の利便性までを考慮する必要があります。
コンピューターはあくまでも計算機にすぎませんので、本当の意味での最適なデザインを提案してくれるものではありません。変数を決めたり、デザインの良し悪しを複合的に判断するのは人間です。コンピューターに依存するのではなく、道具として上手く使いこなす人間の知恵が大切なんだろうと考えています。ただ、コンピューターが返してくるデザイン案は、時に美しく、意外性があり、クリエイティビティを刺激されますね。

MEMBER

デザインエンジニア
細見 亮太

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