西田 拓真
民間企業と共同で地震時における人々のストレス度を定量的に評価する研究を行っております。
ウェアラブルバイタルセンサ・地震時を疑似体験可能な装置を活用することで、地震時における心拍の増減を測定し、分析を行いました。
その内容について、ご紹介させていただきます。
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民間企業と共同で地震時における人々のストレス度を定量的に評価する研究を行っております。
ウェアラブルバイタルセンサ・地震時を疑似体験可能な装置を活用することで、地震時における心拍の増減を測定し、分析を行いました。
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地震大国である日本において、構造設計者は如何に安全な建物を設計できるかについて追及を行ってきました。しかし、大地震が周期的に発生している昨今において、被災後に精神疾患を発症する被災者の方も多く確認され、建物の安全性はもちろんのこと、人々の安心性についても追及する必要が出てきております。人々が地震に受けるストレス度(安心性)については、従来、被災後のアンケート調査による定性的な評価に留まっていました。そこで、ウェアラブルバイタルセンサセンサ・振動台を活用し、建物の構造形式の違い(耐震構造・免震構造)が人々のストレス度にどの程度影響を与えているかを確認する実験及び分析を行いました。地震時を想定した状況下で、心拍の変動によるココロの動きを可視化することで、人々のストレス度を定量的に評価しました。
センサには心拍・体表温・3軸加速度を同時に計測可能な小型ウェアラブルバイタルセンサを使用しました。電極パッドを左胸部に直接貼り付け、無線により、PCにデータを転送・保存を行います。「ストレス」および「リラックス」(安心性)に、自律神経(交感神経、副交感神経)の活性化が関与しており、自律神経の活性度は血圧と呼吸によって、心拍変動となって表れます。呼吸変動に対応する高周波成分(HF成分)と血圧変動に対応する低周波成分(LF成分)を周波数解析により抽出し、両者の大きさを比較します。リラックスしている状態では、HF成分とLF成分も現れるますが、ストレス状態にある場合には、LF成分が現れる一方、HF成分が減少します。従って、リラックス状態にあるとLF/HF(LFratio)の値は小さくなり、ストレス状態にあるとLF/HF(LFratio)の値が大きくなります。
実験を行う被験者は計4人としました。被験者には東北地方太平洋沖地震を再現した耐震/免震建物の揺れを計2回の体験してもらい、体験時の心拍データを測定しました。測定した心拍データを周波数解析することで、自律神経バランス指標(LFratio)を算出します。被験者ごとに、振動台の加振前後のLF/HFを比較し、構造形式の違いによる、人々のストレス度を確認しました。加振前後のLFratioの平均値に着目すると、東北_耐震の場合は増加する傾向にあり、東北_免震の場合は、減少する傾向が見られました。サンプル数は少ないものの、耐震と免震という構造形式の違いにより、耐震の方が人々のストレス度が高い傾向となりました。
1995年に兵庫県南部地震が発生して以来、日本では地震の活動期に入ったかの様に大地震が周期的に発生しています。実験・分析の結果から、構造形式の違いにより、人々の安心性に違いを確認することができ、「免震構造」は防災・減災対策の有効な一手段となり得る可能性を秘めています。しかし、免震建物は年200棟程しか建築されておらず、「免震構造」の健全な普及に向けた対策が必要とされています。詳細な内容については日本建築学会にて発表させていただきました。
入社以降、一貫して構造設計や解析コンサルティングに携わってきました。現在は構造設計のプレイングマネージャーと同時に、将来を見据えた戦略プロジェクトの推進担当をしています。