野田 卓見
里山らしい多様な風景の演出に応えるため、それぞれのキャラクターに合わせた構造計画を行いました。
お近くにお立ち寄りの際はぜひご覧くださいませ!
...read more
credit: Masaki Iwata+Sou Fujimoto Architects
里山らしい多様な風景の演出に応えるため、それぞれのキャラクターに合わせた構造計画を行いました。
お近くにお立ち寄りの際はぜひご覧くださいませ!
...read more
本建物は千葉県の中央に位置する上総牛久駅前の公衆トイレです。都心や成田、羽田空港から約1時間でアクセス可能な立地でありながら、養老川流域の周辺地域では多くの里山が点在し、美しい自然の風景を楽しむことができます。本建物は「里山トイレ」という常設展示作品でもあり、里山のように人と自然と建築が溶け合い、相互に依存し合う場所として、木々の間に点在したトイレが、駅前に多様性を持った里山風景を演出します。また、上総牛久駅は養老渓谷へとつながる房総里山トロッコの始発駅であり、里山の始まりを予感させる風景を駅前につくることを意図しています。
建物は4棟のトイレと1棟の待合所で構成されています。各トイレはユニークなキャラクターを持ち、それぞれ「緑があるトイレ」、「菜の花色+切通しのトイレ」、「階段のトイレ」、「塔のトイレ」と名前が付いており、それぞれのトイレで来訪者は訪れるたびに違う体験をすることができます。
①緑があるトイレ
建物の中に配置された植栽が特徴的な整形箱型の平屋木造建物です。内部は約6mの細長い女性用個室トイレとなっており、吹抜けから取り込まれる光と風によって、季節によって移ろう風景を体験できます。
構造形式は木造軸組工法で、延床面積は11.55㎡、最高高さは2.44mです。吹抜けが耐力壁に隣接しているため、水平構面の応力伝達に配慮しました。吹き抜けの開放的な意匠を邪魔しないよう、火打ち等の水平抵抗要素を設けず、梁の弱軸曲げに期待する設計としています。梁の弱軸応力は立体フレーム解析により算定し、なるべく梁受け金物に弱軸応力が生じないよう、部材の勝ち負けに配慮しました。
②菜の花色+切通しのトイレ
菜の花色の大開口が特徴的な整形箱型の平屋木造建物です。内部は間仕切り壁によって2つの女性用個室トイレに分かれており、開口から差し込む光によって、菜の花畑に包まれたような空間を演出します。
構造形式は木造軸組工法で、延床面積は4.81㎡、最高高さは3.83mです。メインの開口がある構面は、木質ラーメンフレームとし、柱梁接合部には引きボルト形式のモーメント抵抗接合を採用しました。
③階段のトイレ
階段が特徴的な平屋木造建物です。屋上は展望デッキとなっており、小湊鐡道のレトロな車両を眺めることができ、待合スペースや休憩スペースとして利用することができます。内部は男性用トイレと多目的トイレで構成されています。
構造形式は木造軸組工法で、延床面積は13.23㎡、最高高さは3.47mです。平面的、立面的に斜めの部材取り合いが出てくるため、適宜、在来仕口や鋼板挿入ドリフトピン形式の特注金物で接合部を納めました。階段手摺の支柱はササラ桁の側面から2本のボルトで縫い合わせ、水平外力に対してモーメント抵抗させる設計としました。
④塔のトイレ
5つの建物の中で最も背の高い、塔状の平屋木造建物です。内部は2.2m角の女性用個室トイレとなっており、トップライトから差し込む光が神秘的な空間を演出します。
構造形式は木造軸組工法で、延床面積は4.84㎡、最高高さは7.19m、塔状比は3.27です。塔状比が比較的大きいため、平屋木造にしては風荷重時の引抜力が大きく、高耐力の柱脚金物を採用しました。また、斜め取り合いの接合部は特注金物と構造用ビスを採用しています。
基礎は直接基礎とし、浮き上がりに対しては基礎梁せいを900mmと大きく設定し、自重によるカウンターウェイトで対応しました。
⑤開放的な待合所
建物の内外色を小湊鉄道の車体に用いられている小湊ファイヤーオレンジ色で統一した、仕上げが印象的な切妻屋根の平屋木造建物です。駅前バス乗り場の待合所として使われ、中には各トイレの空室状況が分かる案内板が設置されています。
構造形式は木造軸組工法で、延床面積は4.80㎡、最高高さは3.22mです。開口周りの壁は幅450mmの狭小な合板耐力壁とし、水平剛性を確保しました。
竣工写真を掲載いたします。
是非皆様もお立ち寄りください。
金太郎に所縁のある南足柄市出身の佐藤澪でございます。 南足柄市体育センターにある更衣室は凄く素敵なので是非ご覧ください。 木質構造物の設計を主に担当しています。 よろしくお願いします。